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夜明けまでのセレナーデ
第6章 Le Fantôme de l'Opéra
「…瑞葉、今夜何か予定はある?」
朝食を済ませた速水が、ナプキンを無造作に畳みながら尋ねた。
「ううん。午後の講義があるだけだよ」
瑞葉はゆっくりとカフェ・オ・レを飲み干した。

「良かった。
オペラ座に音楽劇を観に行かないか?
ラング先生にチケットをいただいたんだ」
ラング先生とは速水と仲の良い芸術学の准教授だ。
講師になりたての速水に何と親切にしてくれる好人物らしい。

「エメラルドの麗人と行けよ…て。
…ラング先生と会ったのか?瑞葉…」
少し心配そうに速水がちらりと見遣る。
「前に大学で偶然にね…。
ラング先生はボザールで座学の講義をしているから…。
…何心配してるの?英介さん」
吹き出す瑞葉の頰を軽く摘み、苦笑する。
「…ごめん」
立ち上がり、瑞葉の隣に回り込み、掬い上げるように強く抱き締める。
…パリに来てから速水が愛用しているエルメスのトワレが、ふわりと薫る。

「…君のことになると、僕は駄目だな…。
他人が君に興味を持つだけで、心配でたまらなくなる」
やや苦しげに告げる速水の背中を柔らかく抱く。
「…英介さん…。
僕は貴方のものだよ…」
「…瑞葉…!」
顎を掴まれ、唇を奪われる。
…次第に濃密なキスになるのを、やんわりと止める。
「…アンナが来る…。
もう時間だ…」
…いくら自由恋愛な国だとしても、朝から男同士の濃厚なキスシーンを見せるのは、憚られる。

「…わかった…。ごめん…瑞葉」
紳士の速水は額を付けると、照れ笑いをした。
「…ううん…」
お返しに、瑞葉から頰に軽くキスをする。
…優しい英介さん…。
ずっと、変わらない…。
…あの日から…何ひとつ…。

アンナがダイニングに入って来て、速水に上着を着せかける。
もう出勤時間なのだ。

「演目は何?」
まだ時間がある瑞葉はテーブルに着いたまま、尋ねた。
パリに来て観劇をするようになったが、音楽劇は好きだ。
オペラ座で公演される演目は、上質な人気作品ばかりなので期待出来る。

速水はアンナから鞄を受け取り、瑞葉に微笑みかける。
「…Le Fantôme de l'Opéra。
オペラ座の怪人だ」


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