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夜明けまでのセレナーデ
第6章 Le Fantôme de l'Opéra
「ミズハ、今晩空いてる?
一緒に食事でもしないか?」
画材を片付けていると、同級生のジュードが肩を抱いてきた。
「ありがとう、ジュード。
でも今夜はオペラ座にファントムを観に行くんだ」
笑顔でやんわり断ると、隣の席でイーゼルを片付けていたジョルジュが宥めるように口を出した。
「よせよ、ジュード。
ミズハには彼を熱愛してやまない恋人がいるんだからさ。
余計なちょっかいは、お前の身の為にならないぜ」

ジュードは大袈裟に天を仰いだ。
「あのハンサムなソルボンヌの講師か…。
やれやれ…。
よく迎えに来ているもんなあ。
今日も白馬に乗ってお迎えかい?」
瑞葉はにこやかに微笑みながら首を振る。
「ううん。
今日は直接オペラ座で待ち合わせ」
…じゃあ、またね…と、デッサン室を出ようとする瑞葉にジュードが未練たらしく声を掛ける。
「オペラ座まで一人で行けるか?」

ドアに白い手を掛けながら、瑞葉は悪戯っぽくウィンクをした。
「パリに来てもう三年だよ。
オペラ座で迷子になるなんてbebeちゃんだ」

adieu…と投げキスされ、二人の男はうっとりとした眼差しになり、やがてお互いに眼を合わせ、微かな落胆のため息を吐いたのだった。
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