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夜明けまでのセレナーデ
第6章 Le Fantôme de l'Opéra

…瑞葉の手が止まった。
「…どうして、そう思うの?」
ゆっくりと振り返り、静かに尋ねる。
瑞葉のエメラルドの瞳に見つめられ、アンナは緊張気味に両手を握りしめた。
けれど、怯むことなく、彼女は口を開いた。
「…私…不思議だったんです。
ミズハ様は、ムッシューがとてもおもてになる様子をご覧になってもいつも微笑んでいらっしゃるだけ…。
…普通は恋人が自分以外のひとに好かれていたら、嫉妬したりやきもきしたりしませんか?
だって、自分以外のひとに大切な恋人を取られたくないもの。
…でも、ミズハ様は平気みたい…。
…まるで…まるで…ムッシューを愛していないみたいに…」
「アンナ」
大きくはないが、鋭い一言が瑞葉の形の良い薄紅色の唇から飛んだ。
その声にはっと我に返ったかのようにアンナは口を押さえた。
「も、申し訳ありません!
失礼を申し上げました!」
頭を下げる彼女に、瑞葉は淡々と答えた。
「…君にそう見えていたのなら、仕方ないね」
「…ミズハ様…私…」
おずおずと弁解しようとするアンナに背を向ける。
濃紺のバスローブを肩から滑らせる。
…西洋人より更に白い…透き通るような素肌が眼を射抜き、息を止める。
傍らに佇むアンナにたじろぎもせずに、素肌を晒しながら、独り言のように呟く。
「…ねえ、アンナ。
本当の愛以外は、すべて偽物なのかな…」
「…え…?」
意味が分からずに聞き返す。
…けれど、答えは返っては来なかった。
瑞葉はさらりと絹のドレスシャツを羽織り、いつもと変わらない調子で指示をした。
「タクシーを呼んでくれ、アンナ」
…それから…
瑞葉が振り返った。
蜂蜜色の美しい髪…極上のエメラルドの瞳…。
西洋人でも、こんなにも美しいひとはいない…。
アンナは息を潜めながら、思わず見惚れた。
「…これからも、英介さんに優しくしてあげてくれ…」
…優しいような、哀しいような…どこか空虚のような、胸が苦しくなるような微笑みを、瑞葉は幽かに浮かべていたのだ。
「…どうして、そう思うの?」
ゆっくりと振り返り、静かに尋ねる。
瑞葉のエメラルドの瞳に見つめられ、アンナは緊張気味に両手を握りしめた。
けれど、怯むことなく、彼女は口を開いた。
「…私…不思議だったんです。
ミズハ様は、ムッシューがとてもおもてになる様子をご覧になってもいつも微笑んでいらっしゃるだけ…。
…普通は恋人が自分以外のひとに好かれていたら、嫉妬したりやきもきしたりしませんか?
だって、自分以外のひとに大切な恋人を取られたくないもの。
…でも、ミズハ様は平気みたい…。
…まるで…まるで…ムッシューを愛していないみたいに…」
「アンナ」
大きくはないが、鋭い一言が瑞葉の形の良い薄紅色の唇から飛んだ。
その声にはっと我に返ったかのようにアンナは口を押さえた。
「も、申し訳ありません!
失礼を申し上げました!」
頭を下げる彼女に、瑞葉は淡々と答えた。
「…君にそう見えていたのなら、仕方ないね」
「…ミズハ様…私…」
おずおずと弁解しようとするアンナに背を向ける。
濃紺のバスローブを肩から滑らせる。
…西洋人より更に白い…透き通るような素肌が眼を射抜き、息を止める。
傍らに佇むアンナにたじろぎもせずに、素肌を晒しながら、独り言のように呟く。
「…ねえ、アンナ。
本当の愛以外は、すべて偽物なのかな…」
「…え…?」
意味が分からずに聞き返す。
…けれど、答えは返っては来なかった。
瑞葉はさらりと絹のドレスシャツを羽織り、いつもと変わらない調子で指示をした。
「タクシーを呼んでくれ、アンナ」
…それから…
瑞葉が振り返った。
蜂蜜色の美しい髪…極上のエメラルドの瞳…。
西洋人でも、こんなにも美しいひとはいない…。
アンナは息を潜めながら、思わず見惚れた。
「…これからも、英介さんに優しくしてあげてくれ…」
…優しいような、哀しいような…どこか空虚のような、胸が苦しくなるような微笑みを、瑞葉は幽かに浮かべていたのだ。

