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夜明けまでのセレナーデ
第7章 Fantôme de l'Opéra 〜epilogue〜
「…本当なのか?
ヤクモが生きていて、そしてその…ミズハと…」
はっきり口にするのは憚られた。
…日本での彼らの過去の経緯は、大まかに聞いていた。
だから俄かには信じ難い内容だったのだ。

「本当です。
ボザールの瑞葉の級友が、オペラ大通りではっきりと目撃したそうです。
…黒尽くめの服装の…背の高い瑠璃色の瞳をした寒気がするほどに美しい男と…瑞葉が歩いているのを…。
…まるで…」
唇を噛み締め、抑えきれぬ苦悩を滲ませた。

「…恋人同士のように愛おしげに寄り添っていたと…」
速水の手がぎゅっと握りしめられる。

「…しかし、それだけでは…」
「いいえ。私には分かります。
彼は、八雲です」
きっぱりと断言する。

「けれど八雲は三年前、日本で火災に巻きこまれて亡くなったのだろう?」
少し声を潜める。
「…しかも、ミズハに刺されて…。
それで生きていて…突如としてパリのオペラ座に現れるなんて…。
まるでそれじゃ…そう…Fantôme de l'Opéra のようじゃないか…」

速水は可笑しそうに乾いた声で小さく笑った。
「…本当に…。
まさに、オペラ座の怪人ですね…」
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