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夜明けまでのセレナーデ
第9章 サンドリヨンとワルツを
不意打ちのように発せられたその名前に、思わず振り返る。
「…本気で待つ気はあるのかと聞いているんだ」
「何言っているんですか?
待つに決まっているじゃないですか」
思わずむっとして言い返す。
紳一郎は寧ろ静かな口調で話し始めた。
「…お前は別に同性愛者じゃないだろう?
暁人に求愛されて、情にほだされて恋している気分になったんじゃないのか?」
「紳一郎さん!」
一重の涼やかな…どこか静謐な凄みを秘めた瞳が薫を見つめる。
「…僕は女は愛せない。
男にしか…十市にしか欲情しない。
だから十市じゃないとだめなんだ。
…もっとも、一人例外はいるけれどね」
自嘲的に笑い髪を搔き上げる仕草にそこはかとない色香が漂い、どきりとする。
「…けれどお前は違う。
普通に女と恋愛も…セックスもできるだろう」
「紳一郎さん!決めつけないでください!」
「…暁人と、セックスしてもいないのに?」
息を飲んで絶句する薫に、紳一郎は優しく微笑みかける。
「責めている訳じゃない。
まだ男と深いところまで行ってないのなら…引き返すのなら今だよ。
…男を愛しても、楽しいことは何もない」
「何を言っているんですか⁈
僕は暁人が好きです!好きだから待っているんです!」
「…じゃあ、なぜ成田くんに焼もちを焼く?」
「焼もち?馬鹿馬鹿しい。そんなの、焼いてませんよ。
大体何であいつに焼もちを焼かなきゃならないんですか⁈」
腹立たしくて苛々する。
…何が焼もちだよ!
なんでそんなものを…僕が…?
ありえない!
訳の分からぬ熱い昂りが胸を渦巻く。
思わずきつく叫んだ薫の頰に、紳一郎の白い手が静かに触れる。
「…中途半端な気持ちなら、待つのはやめろ。
暁人も迷惑だ」
「…紳一郎さん!」
白い手はそっと離れ、紳一郎は背を向けた。
「…お前は男を愛することの意味を、まだ何も知らない」
…その寂しげな声は、湿度の高い夏風に攫われた…。
「…本気で待つ気はあるのかと聞いているんだ」
「何言っているんですか?
待つに決まっているじゃないですか」
思わずむっとして言い返す。
紳一郎は寧ろ静かな口調で話し始めた。
「…お前は別に同性愛者じゃないだろう?
暁人に求愛されて、情にほだされて恋している気分になったんじゃないのか?」
「紳一郎さん!」
一重の涼やかな…どこか静謐な凄みを秘めた瞳が薫を見つめる。
「…僕は女は愛せない。
男にしか…十市にしか欲情しない。
だから十市じゃないとだめなんだ。
…もっとも、一人例外はいるけれどね」
自嘲的に笑い髪を搔き上げる仕草にそこはかとない色香が漂い、どきりとする。
「…けれどお前は違う。
普通に女と恋愛も…セックスもできるだろう」
「紳一郎さん!決めつけないでください!」
「…暁人と、セックスしてもいないのに?」
息を飲んで絶句する薫に、紳一郎は優しく微笑みかける。
「責めている訳じゃない。
まだ男と深いところまで行ってないのなら…引き返すのなら今だよ。
…男を愛しても、楽しいことは何もない」
「何を言っているんですか⁈
僕は暁人が好きです!好きだから待っているんです!」
「…じゃあ、なぜ成田くんに焼もちを焼く?」
「焼もち?馬鹿馬鹿しい。そんなの、焼いてませんよ。
大体何であいつに焼もちを焼かなきゃならないんですか⁈」
腹立たしくて苛々する。
…何が焼もちだよ!
なんでそんなものを…僕が…?
ありえない!
訳の分からぬ熱い昂りが胸を渦巻く。
思わずきつく叫んだ薫の頰に、紳一郎の白い手が静かに触れる。
「…中途半端な気持ちなら、待つのはやめろ。
暁人も迷惑だ」
「…紳一郎さん!」
白い手はそっと離れ、紳一郎は背を向けた。
「…お前は男を愛することの意味を、まだ何も知らない」
…その寂しげな声は、湿度の高い夏風に攫われた…。