この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
夜明けまでのセレナーデ
第9章 サンドリヨンとワルツを
…その温かな指先から、じわりと愛が伝わってくるようだった。

「…いいえ、陛下…私は…」
首を振る絹の頰を愛おし気に、撫でる。
「お父様と呼んでくれ、衣都子」
「…お父様…」
素直にそう呼ぶと、皇帝は嬉しそうに微かに微笑った。
…上つ方は、大っぴらに笑わないのだな…と、どこかぼんやりしながら思った。
「そなたとはいつかゆっくりと積もる話をしたいものだ。
そなたの母に出会った時の話や…。
けれど今は時世がそれを許さない。
私は自分の幸せより国民の幸せを最優先しなくてはならないのだ。
…我が国民が戦勝国の奴隷とならぬよう、私は命を賭けるつもりだ」
「お父様…!」
…もしかして、死を覚悟しておられるのだろうかと思わず不安になり、頰に触れている皇帝の手に手を重ねる。
「…お父様…。私にお力になれることはないでしょうか?
何でも仰ってください…」
皇帝の眼鏡越しの瞳が感極まったように細められた。
「…おお…!何という優しい言葉を…。
我が皇后や姫宮たちはそのような言葉を誰一人として掛けてはくれなかったというのに…」

そのまま、その胸に抱き竦められる。
…高貴な香の薫りが、絹の胸に温かさとともに染み込んでくる。

「…ありがとう、大丈夫だ。
これでも私は皇帝だ。
一人で乗り越えてみせるよ」
…そうして、離れがたいように絹の髪を撫でながら、語りかけた。

「…そなたはもう何も心配しなくて良いのだ。
縣男爵の家でそなたを預かり、養育してもらう話を付けた。
…素晴らしい大貴族の家だ。
莫大な資産を保有しているので貴族制度が廃止されても心配はない。
男爵も男爵夫人も品格があり人柄も申し分のない。
子息は大層美しい貴公子だ。
…ことに…男爵夫人はとても美しく華やかな…比類なきレディだ。
まるで大輪の紅薔薇のような…」
…少し照れたように付け加えた。

「…私の初恋のひとなのだよ…」


/322ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ