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夜明けまでのセレナーデ
第9章 サンドリヨンとワルツを
「…来月、我が家で絹さんのお披露目の夜会を開きます。
久しぶりに九州から父が戻りますし、母も軽井沢からその日だけ帰ってきます。
僕の妹の菫もやっとご紹介できますよ。
おしゃまで生意気な妹ですけれどね。
きっと絹さんに懐くでしょう。
…もちろん、陛下はお忍びでいらっしゃいます。
絹さんの晴れ姿を楽しみにしておられるそうですよ。
あとは、両親の親しい友人たちと、母の親族…。
あ、紳一郎さんもご招待しました。
…こじんまりした夜会ですので、どうぞご心配をなさらないでくださいね」

「…はい」
返した微笑みが硬かったせいだろうか…。
薫は絹の貌を覗き込み、優しく尋ねた。
「ほかに何か気掛かりが?」
美しい瞳と間近で視線が合い、白い頰が熱くなる。
落ち着こうと両手を握りしめる。
…綺麗な男のひとって、どうしてこんなにひとをどきどきさせるのかしら…。

困惑する邪念を振り払うように告げる。
「…はい…あの…ワルツです…」

意外な言葉を耳にしたかのように、薫は形の良い眉を上げた。
「ワルツ?」
絹は頷く。
「…梅琳さんから、こちらの夜会ではいつも皆様ワルツを踊るのだと聞きました。
…私…ダンスは踊れません…」
スカートをきゅっと握りしめる絹を見下ろして、薫は好意的に笑った。
「ああ、なんだ。そんなことですか。
…確かに我が家の夜会は、必ず舞踏室でワルツを踊るのが習わしです。
…母がダンスが大好きで…そんな習慣がついてしまったんです。
戦時中も、憲兵達に睨まれるのも知らん顔で…母はよく父とワルツを踊っていたなあ…。
…その光景だけは、なかなか好きでしたよ…」
薫の端麗な貌に懐かしそうな色が灯る。

…西洋のお城のような屋敷…広い舞踏室…美しい夫妻が踊るワルツ…。
見たこともないのに、その華やかな光景は鮮やかに思い浮かぶほどだ。

「…僕もよく、幼馴染とバルコニーで踊りました…。
…懐かしいな…」

絹は眼を見張った。

薫の透明な水晶のように澄んだ美貌に、柔らかな…どこか艶めいた色が滲んでいた…。


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