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夜明けまでのセレナーデ
第9章 サンドリヨンとワルツを
「…暁人…。お前がいけないんだぞ。
うんともすんとも言わないから。
やきもきするなら、早く帰ってこい」
バルコニーの椅子に腰掛けて、暁人の写真に毒づく。

…星南学院の制服姿の暁人は、生徒会執行役員だけが着ることができる紫のベストを身に纏っている。
これは卒業記念に撮られたものだ。
生徒会役員室の机の前でゆったりと腰掛け、端正な貌にどこか恥ずかしそうな笑顔を浮かべている。
…写真を撮られる時の暁人の癖だ。

暁人が海軍に入隊する際に、写真を交換した。
薫は馬術大会での騎乗姿のものだ。
純白の乗馬ジャケットに白いレースのリボンタイのシャツ、黒い細身の乗馬ズボン、黒革のブーツ…。
薫のその姿を、暁人はいたく気に入っていたのだ。

「この写真があれば、寂しくないよ。
毎晩、薫の夢を見る」
臆面もなく屈託のない笑顔でそう言ったっけ…。

「…暁人の馬鹿…。
何を暢気に笑ってるんだよ」
写真の暁人を睨みつける。


「…早く帰ってこないと、絹さんを好きになってしまうぞ。
いいのか?」

…絹は、薫が初めて気になった少女だ。
容姿の美しさだけでなく、その健気な性質が初めて好もしい女の子に出会えたと思えたのだ。

「…絹さんと僕をくっつけようと、外野がそわそわしているんだからな…」
紳一郎の推察は当たっているのだろう。
皇帝は、恐らくは絹と薫を結婚させたいのだ。

…写真の中の暁人は、優しく微笑むだけだ。

「…暁人の馬鹿…、馬鹿野郎…」

…早く…早く帰ってきて…。

苦しい想いが溢れ出す。
薫は暁人の写真を抱きしめ、語りかけた。

「…早く帰ってこい。
僕の恋人は、お前だけだ…」

…答えの代わりに、夏の夜風がさやかに音を立てた…。
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