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夜明けまでのセレナーデ
第9章 サンドリヨンとワルツを
「…このホールは、戦前は舞踏室としても使われていたのですよ。
…星南学院女子部の女の子と、年に一度舞踏会が開かれて…懐かしいな…」
薫は懐かしそうに、琥珀色の瞳を細めて、周囲を見渡した。

…誰を思い出されているのかしら…。
恋人はやはり、星南学院の女生徒だったのかしら…。
絹は薫の学生時代に想いを馳せる。

…見つめるだけでため息が出てしまいそうに美しくて、煌々しくて、少し高慢で…けれど、それすらも魅力に変えてしまう…
そんな少年だったのだろう…と。

学院所有の古い蓄音機にヨハン・シュトラウスのウィーン・ワルツを掛けながら、ワルツのレッスンは始まる。

「…戦争が終わって良かったことのひとつは、西洋音楽のレコードを堂々と聴けることですね。
僕はダンスはあまり得意ではないけれど、ワルツは好きなんです」
薫はなぜか上機嫌だ。
そして、得意ではないというワルツは滑らかで優美で空気の途切れを感じさせない美しいものだ。
素人の絹を上手にさり気なくサポートし、技術だけではなくワルツの楽しさを教えてくれる。

薫の手のひらの温かさが絹に溶け込んだ頃、少し咎めるように尋ねてみる。

「…どうしてあんなことを仰ったのですか?」
「…え?」
薫の琥珀色の瞳が、絹を捉える。
「貴方が愛していらっしゃるのは、私ではありませんわよね…?
貴方には忘れられない大好きな恋人がいらっしゃる。
その方が戦地から帰って来るのをずっとお待ちになっていらっしゃる。
もちろん、私とご結婚されるおつもりもないわ」

琥珀色の瞳が、ふわりと優しく微笑った。
「…絹さんには敵わないな」
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