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夜明けまでのセレナーデ
第9章 サンドリヨンとワルツを

嵐のような激しい物音とともにホールの扉が乱暴に押し開かれた。
「ちょっと待った!」
振り返る二人の前に仁王立ちになるのは、龍介であった。
「龍ちゃん…」
つかつかと二人の前まで大股に進み、龍介は絹の手を取り薫から引き離した。
「絹は俺のもんだ。
あんたには渡さねえよ」
凄んだ龍介を不快な貌もせずに面白そうに見遣る。
「…へえ…。強気だね。
でも、夜会は来週だよ。
それが過ぎたら絹さんは事実上、僕の婚約者だ。
どうする?荒くれ者のロミオ」
「…考えるまでもねえ」
龍介は絹を強く抱きしめ、啖呵を切るように言い放った。
「駆け落ちするさ」
「駆け落ち…?」
大きな黒い瞳を見開く絹の肩を抱き、龍介は掻き口説く。
「…絹、俺と一緒に浜松に行ってくれないか?」
「浜…松…?」
不思議そうな貌をする絹の眼を見つめ、龍介はこくりと頷く。
「浜松に、俺の叔父貴が鰻屋を開いているんだ。
そこで修行して、ゆくゆくは店を継いでくれないかって前々から言われてたんだ。
叔父貴は独身だ。
せっかく手塩にかけて育て盛り立てた店を、甥っ子の俺にぜひ継いでほしい…て。
浅草の店は兄貴が継ぐ。
俺は浜松で一から鰻を学んでみたいんだ。
俺はずっと、いつか絹と結婚して二人で鰻屋をやりたいと思っていた。
…でも、絹が姫宮様だと知って言い出せなかった。
俺みたいな男と釣り合うひとじゃねえ…て…。
俺なんかと一緒になって鰻屋をやるなんて、絹は幸せになれないんじゃないか…て…」
…だけど…
と、龍介は雄々しい眼差しを見開き、絹を熱く見つめた。
「…俺は絹を誰にも渡したくねえ。
絹は俺の…俺だけのお姫様なんだ…!
絹、愛してる…!
俺の…俺の嫁さんになってくれ…!」
「ちょっと待った!」
振り返る二人の前に仁王立ちになるのは、龍介であった。
「龍ちゃん…」
つかつかと二人の前まで大股に進み、龍介は絹の手を取り薫から引き離した。
「絹は俺のもんだ。
あんたには渡さねえよ」
凄んだ龍介を不快な貌もせずに面白そうに見遣る。
「…へえ…。強気だね。
でも、夜会は来週だよ。
それが過ぎたら絹さんは事実上、僕の婚約者だ。
どうする?荒くれ者のロミオ」
「…考えるまでもねえ」
龍介は絹を強く抱きしめ、啖呵を切るように言い放った。
「駆け落ちするさ」
「駆け落ち…?」
大きな黒い瞳を見開く絹の肩を抱き、龍介は掻き口説く。
「…絹、俺と一緒に浜松に行ってくれないか?」
「浜…松…?」
不思議そうな貌をする絹の眼を見つめ、龍介はこくりと頷く。
「浜松に、俺の叔父貴が鰻屋を開いているんだ。
そこで修行して、ゆくゆくは店を継いでくれないかって前々から言われてたんだ。
叔父貴は独身だ。
せっかく手塩にかけて育て盛り立てた店を、甥っ子の俺にぜひ継いでほしい…て。
浅草の店は兄貴が継ぐ。
俺は浜松で一から鰻を学んでみたいんだ。
俺はずっと、いつか絹と結婚して二人で鰻屋をやりたいと思っていた。
…でも、絹が姫宮様だと知って言い出せなかった。
俺みたいな男と釣り合うひとじゃねえ…て…。
俺なんかと一緒になって鰻屋をやるなんて、絹は幸せになれないんじゃないか…て…」
…だけど…
と、龍介は雄々しい眼差しを見開き、絹を熱く見つめた。
「…俺は絹を誰にも渡したくねえ。
絹は俺の…俺だけのお姫様なんだ…!
絹、愛してる…!
俺の…俺の嫁さんになってくれ…!」

