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夜明けまでのセレナーデ
第10章 僕の運命のひと
…「あら、薫さん?よくいらして下さったわね。
お久しぶりですこと…。
お元気でいらしたかしら?」
昔と少しも変わらない少女のように愛らしい容姿の絢子が、白い浴衣姿でベッドから起き上がっている。
優しい控えめな微笑み…以前の絢子のままだ。
その様子に、薫は安堵する。

「お久しぶりです。小母様。お元気そうで何よりです」
差し出されたその痩せ細った透き通るような白い手の甲に、恭しく口付ける。

「…薫さんは、相変わらずお綺麗ね」
眩しげな眼差しで和かに笑い…

「暁人さんに会いにいらしたのね?
…ごめんなさいね。まだ馬術倶楽部からお戻りではないのよ。
もうすぐ大会が近いから、練習に精を出していらして…お怪我をなさらないか心配で仕方ないの」
やや憂い貌で呟いた。

薫は傍らの大紋を振り返った。
大紋は黙って頷いた。

「薫くんには暁人の部屋で待っていて貰おう。
私が案内するよ。
…絢子、少し待っていて」
優しく絢子の髪を撫でるその手に、濃い愛情が滲んでいた。

絢子はややはにかんだように頷いた。
「…分かりましたわ。
薫さん、ごゆっくりしていらしてね。
あとでお茶とスコーンを運ばせますわ」

…その嫋やかな表情と口調は、かつて知る絢子そのものだ…。



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