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夜明けまでのセレナーデ
第11章 僕の運命のひと 〜人魚姫と王子のお伽話〜
「…え…?」
不思議そうな貌をする暁人に、ビセンテは可笑しそうな…それでいてどこか痛みを感じさせる表情で語り始めた。
「…エスメラルダの母…レティシアは、遭難しかけた船に乗っていた小国の貴族の娘だった。
俺は助けると見せかけて、レティシアをそのまま攫った。
隣国の貴族に嫁ぐ前に、俺が掠奪したんだ」
「…最低ですね…」
思わず呟いた本音に、ビセンテは気を悪くした風もなくからりと笑った。
「一目惚れだったのさ。
…この世にこんなにも美しい女がいるとは、信じられなかったね。
だが、俺のような野蛮な海賊風情を好きになってくれるはずもなく…エスメラルダが生まれるまでは碌に口も聞いてもらえなかったさ」
眼で合図をし、暁人を部屋の中に誘う。
…そこは、広い客間のような部屋であった。
重厚で上質な家具や調度品の数々は、あたかも欧州の大貴族の部屋のそれようだ。
「レティシアだ。美人だろう?」
指し示す先を見上げると、壁に掲げられた肖像画があった。
…眩い金髪の長い髪、透き通るような白い肌、薔薇色の頬、海の色を写したかのような紺碧の瞳、花弁のような可憐な唇…。
まるで中世の姫君のようなクラシカルな裾の長い白いドレスを身に纏った美しく優美な貴婦人の姿がそこには描かれていたのだ。
不思議そうな貌をする暁人に、ビセンテは可笑しそうな…それでいてどこか痛みを感じさせる表情で語り始めた。
「…エスメラルダの母…レティシアは、遭難しかけた船に乗っていた小国の貴族の娘だった。
俺は助けると見せかけて、レティシアをそのまま攫った。
隣国の貴族に嫁ぐ前に、俺が掠奪したんだ」
「…最低ですね…」
思わず呟いた本音に、ビセンテは気を悪くした風もなくからりと笑った。
「一目惚れだったのさ。
…この世にこんなにも美しい女がいるとは、信じられなかったね。
だが、俺のような野蛮な海賊風情を好きになってくれるはずもなく…エスメラルダが生まれるまでは碌に口も聞いてもらえなかったさ」
眼で合図をし、暁人を部屋の中に誘う。
…そこは、広い客間のような部屋であった。
重厚で上質な家具や調度品の数々は、あたかも欧州の大貴族の部屋のそれようだ。
「レティシアだ。美人だろう?」
指し示す先を見上げると、壁に掲げられた肖像画があった。
…眩い金髪の長い髪、透き通るような白い肌、薔薇色の頬、海の色を写したかのような紺碧の瞳、花弁のような可憐な唇…。
まるで中世の姫君のようなクラシカルな裾の長い白いドレスを身に纏った美しく優美な貴婦人の姿がそこには描かれていたのだ。