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夜明けまでのセレナーデ
第11章 僕の運命のひと 〜人魚姫と王子のお伽話〜
夕暮れ、暁人はゆっくりと浜辺を歩いていた。
砂浜は白く、海はため息が出そうなほどに美しいエメラルドグリーンに輝いている。
水平線の彼方に見えるのは、今まさに沈もうとする黄金色に煌めく太陽だ。
…監視はもちろんいる。
しかし、一々暁人を咎めたりはしなかった。
暁人が脱走しようとしない限り、黙って見守っているのだ。
「アキ!待って!」
可愛らしい声が背後から飛んだ。
振り返ると、エスメラルダがアメジスト色のスカートを摘み、やや体を揺らしながらこちらに向かって駆け寄ってくるところだった。
「あっ…!」
砂に脚を取られ、転びそうになるエスメラルダをすかさず抱き留める。
「大丈夫?」
暁人の腕の中で、エスメラルダが恥らうように笑った。
…その笑顔に、暁人の脳裏にぼんやりとした面影が浮かび…けれど一瞬で消えた。
「脚が悪いから直ぐに転ぶのよね」
少しも僻んだりはしていない屈託のない言葉であった。
言葉に詰まり、直ぐに首を振る。
「あまり、目立たないよ」
「ううん。いいの。
脚が悪いのは生まれつきだし、大抵のことは出来るし、もう気にしてはいないの」
…でも…と、暁人を見上げ、少し哀しげに微笑んだ。
「パパは私を幸せにしなきゃ…て、それだけを考えているから、アキをここに閉じ込めて、私のお婿様にしたいの。
…ごめんね、アキ」
「…エスメラルダ …」
返す言葉が見つからず、そのあとが続かなかった。
…ビセンテは、本気で自分とエスメラルダを結婚させようとしているのだろうか…。
まだ、己れの過去を何も思い出せない自分を…。
砂浜は白く、海はため息が出そうなほどに美しいエメラルドグリーンに輝いている。
水平線の彼方に見えるのは、今まさに沈もうとする黄金色に煌めく太陽だ。
…監視はもちろんいる。
しかし、一々暁人を咎めたりはしなかった。
暁人が脱走しようとしない限り、黙って見守っているのだ。
「アキ!待って!」
可愛らしい声が背後から飛んだ。
振り返ると、エスメラルダがアメジスト色のスカートを摘み、やや体を揺らしながらこちらに向かって駆け寄ってくるところだった。
「あっ…!」
砂に脚を取られ、転びそうになるエスメラルダをすかさず抱き留める。
「大丈夫?」
暁人の腕の中で、エスメラルダが恥らうように笑った。
…その笑顔に、暁人の脳裏にぼんやりとした面影が浮かび…けれど一瞬で消えた。
「脚が悪いから直ぐに転ぶのよね」
少しも僻んだりはしていない屈託のない言葉であった。
言葉に詰まり、直ぐに首を振る。
「あまり、目立たないよ」
「ううん。いいの。
脚が悪いのは生まれつきだし、大抵のことは出来るし、もう気にしてはいないの」
…でも…と、暁人を見上げ、少し哀しげに微笑んだ。
「パパは私を幸せにしなきゃ…て、それだけを考えているから、アキをここに閉じ込めて、私のお婿様にしたいの。
…ごめんね、アキ」
「…エスメラルダ …」
返す言葉が見つからず、そのあとが続かなかった。
…ビセンテは、本気で自分とエスメラルダを結婚させようとしているのだろうか…。
まだ、己れの過去を何も思い出せない自分を…。