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夜明けまでのセレナーデ
第11章 僕の運命のひと 〜人魚姫と王子のお伽話〜
「…アキはまだ、自分のことを思い出せないの?」
期せずして考えていたことを質問され、どきりとする。

「…うん。
…軍艦に乗っていたのだろうから、海軍将校らしいこと、暁人という名前以外は何も…」
ため息を吐く暁人の手を、エスメラルダはぎゅっと握りしめた。
「無理に思い出さなくていいわよ。
ずっとここにいて」
エスメラルダのエメラルドの瞳が沈みゆく夕日に照らされ、きらきらと輝いた。

「…アキ…。私のこと、好き?」
「え?」
暁人は驚いて、眼を見開いた。
…エスメラルダ…。
美しい黒髪と、宝石のように煌めく美しい瞳の少女…。
何より…自分を助けてくれた、命の恩人だ。

「…君のことはもちろん好きだよ。
…でも、君はまだ十四歳だ」
「十四歳だけど、恋をすることはできるわ。
…私はアキが好き。浜辺で倒れていたアキを見つけた時からずっと好き。
…あの時、白い軍服を着ていたアキを見て、私、王子様が倒れていると思ったの。
昔、亡くなったママに読んでもらったの。
人魚姫の王子様よ。
だから絶対に助けなきゃ…て」

…人魚姫…
それはどんなお話なのだろうか。

暁人は躊躇いながら口を開く。
「…エスメラルダ…。
でも、僕は自分が何者かも思い出せないんだ。
どんな人間だったのか…どんな過去があるのか…。
そんな人間が君を愛する資格はないんだよ。
それに君はまだ幼い。
僕より他に相応しいひとはきっといるはずだ」

暁人の言葉にエスメラルダは激しく首を振った。
「嫌よ!アキがどんなひとでもいいの!そんなの関係ないわ。
私はアキが好き!貴方に、恋をしているの!」
「エスメ…」
言いかけた唇に少女の柔らかな花弁のようなそれが、つと触れる。

艶やかな象牙色の頰が朱に染まり、エメラルドの瞳が恥らうように瞬かれる。

「愛しているの、アキ。
だからどこにもいかないで。お願いよ」
強く抱きつかれ、その可憐な想いに心は乱れる。
暁人はやがて、少女の髪をそっと撫でた。

…岩壁の背後から、ホセが激しい憎悪と嫉妬の眼差しで暁人を睨みつけているのが見て取れた。
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