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夜明けまでのセレナーデ
第2章 礼拝堂の夜想曲
飯倉の大紋邸を辞し、薫はゆっくりと家路を辿る。
…久しぶりに外出したが、街はすっかり様変わりしていた。
夕暮れはとっくに過ぎ…すでに薄闇が辺りを支配する時間帯だというのに、街灯には一つも明かりが灯ってはいない。
敵機の空襲の標的にならないためだ。

この辺りにあったはずの洒落たカフェやレストラン、洋品店は店を閉め、人の気配すらなかった。
…夜は空襲の危険性が極めて高い。
政府からは、市民が出歩かないように外出自粛令が敷かれているためでもあるが、それにしても森閑としている。

…まるで…死の街みたいだ…。
…東京でこうなんだ…。
暁人がいる…太平洋上は…あるいは南方島は…どれほど激戦なのだろうか…。

自分の考えに鳥肌が立つほどにぞっとする。
薫は頭を振り、早足で坂道を登り始めた。

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