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夜明けまでのセレナーデ
第11章 僕の運命のひと 〜人魚姫と王子のお伽話〜
その海賊王の城は、驚くほどに広大でデコラティブで絢爛豪華で…そして芸術的でもあった。
ビセンテの部下や家来は数百人に及び、その中には天才的な建築家や芸術家も存在していた。
市井では暮らせない脛に傷ある曰く付きの者たちが多かったが、中には進んでビセンテに忠誠を誓い、自ら仕える部下となった者たちもいた。

彼らはビセンテの為に、海の王者に相応しい宮殿を作り上げることに情熱と才能を注いだのだった。

大広間は、小さな公国など遠く及ばないほどの煌びやかな調度品に満たされ、豪華な異国情緒に満ちた意匠が凝らされていた。

ビセンテとエスメラルダ…そして暁人が大広間に着くと、部下と家来、下僕たちは一斉に頭を下げた。

ビセンテは悠々と大股で玉座に着き、睥睨するように辺りを見渡した。
そうして大きな手を挙げると、低く良く通る声で言い放つ。

「…今宵はエスメラルダの誕生日の宴…そして、ここにいるアキとの婚約の宴だ。
皆、存分に楽しむが良い」

…そして、暁人にひたりと眼差しを向ける。

「アキ。エスメラルダとワルツを踊るのだ。
…婚約の儀のワルツを…」

海賊王の鶴の一声で、隅に控えていた楽士たちが厳かにワルツを奏で始めた。
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