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夜明けまでのセレナーデ
第11章 僕の運命のひと 〜人魚姫と王子のお伽話〜
…ワルツ。
自分に踊れるのだろうかと半信半疑のまま、エスメラルダの手を取った。
…脚が悪いエスメラルダのことが、気に懸かる。

「…エスメラルダは、ワルツは踊れる?」
小声で尋ねる。

エスメラルダは、美しいエメラルドの瞳をきらきらと輝かせて頷いた。

「ええ、ゆっくりなら踊れるの。
パパに教えてもらったのよ。
私、踊っているほうが、脚のこと目立たないの。
だからワルツは大好き」
暁人はほっとする
「そうか…。それなら良かった」
「ねえ、アキは踊れるの?」
気遣わしげに自分を見つめるエスメラルダに、悪戯っぽく目配せする。
「分からないんだ。
…でも、とにかくやってみるよ」

…改めてしっかりとエスメラルダの手を握りしめ、そのほっそりとした腰を抱き、音楽に合わせて一歩踏み出す。

…この曲は…

聴いたことがある…。

優雅なワルツ曲が、身体に染み込むように流れ込む。
磨き上げられたイタリア大理石の上を、滑らかに進む。

巧みにリードされ、エスメラルダは軽やかにステップを踏む。
二人のワルツが優雅に伸びやかに円を描く。
図らずも周りの人々から感嘆の声が上がる。
…玉座の海賊王が満足気に、杯を煽る。

エスメラルダが驚いたように大きな瞳を見張り、嬉しそうに笑った。

「アキ!すごく上手だわ!貴方踊れるのね!」

「…踊れ…ているのかな…」

…不思議な感覚に包まれる。

まるで、自分ではない誰かに導かれているかのような…いや、かつて自分はこの曲で、ワルツを確かに踊っていたのだと、身体中の細胞が目覚め始めているかのような感覚に襲われたのだ。

「…この曲は…」
独りごちた暁人の鼓膜に、はっきりとした声が木霊した。


…『美しき青きドナウ?…誰がお前なんかと夜会で踊らなきゃならないんだよ、バカ暁人!
お前はモテるんだからさっさと女の子と踊ってこい!』
不機嫌そうなつっけんどんとした口調…。
…けれど、その中にある微かな羞恥…。
見上げる琥珀色の勝気な眼差し…。
生意気そうなつんとした唇…。

…そして、清しい白い花のような薫り…!


雷に撃たれたかのような衝撃が、全身に走る。
不意にステップが途切れ、エスメラルダが不安気に見上げる。
「…アキ…?どうしたの?」

脳裏の靄が一気に晴れ、愛おしい面影が鮮明に蘇る。

暁人はその場に立ち竦み、叫んだ。

「…薫…!」



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