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夜明けまでのセレナーデ
第11章 僕の運命のひと 〜人魚姫と王子のお伽話〜
「…薫…!思い出したよ、薫…!
…僕は…大紋暁人…!
…君は…薫…。
縣薫…!僕の愛おしい恋人だ…!」

あたかも目の前に薫がいるかのように、感激して情熱的に愛を掻き口説く。

…楽士の音楽がふっと止み、大広間は水を打ったかのような静寂に包まれる。

「…アキ…。
…貴方…記憶が戻ったのね…」
エスメラルダの哀し気な…小さな声が震える。
息を呑み、暁人はエスメラルダを振り返る。

「…エスメラルダ…」
…僕は…

口を開きかけた暁人の背後から、大きな濃い闇色の影が覆いかぶさる。

「…エスメラルダ…。何をそんなに哀しそうな貌をするのだ。
…さあ、ワルツの続きを踊るのだ。
…アキ。どうした?
俺の娘ともう一度、ワルツを踊ってはくれないのか?」

愉快そうな色さえ含んだ声は、飽くまでも優しい。

暁人は、頭の中を洪水のように渦巻く記憶を整理しながら、苦し気に口を開いた。

「…ビセンテ…。
僕は今、失われていた記憶を取り戻しました。
…僕の名前は大紋暁人。日本人です。
海軍将校で、少佐でした。
…そして…日本には愛おしい恋人がいます」

大広間の人々が、非難めいた声を上げた。
いち早く、ホセが躍り出るように暁人に走り寄る。

「貴様…!エスメラルダ様との婚約の宴に何を抜かす!」
今にも飛び掛かりそうなほどの怒りを剥き出しにしたホセを、ビセンテは手を挙げて制した。

「まあ待て、ホセ。
アキは記憶が戻ったと言っているだけなのだ。
…よもや、エスメラルダとの婚約の儀を辞めるとは言い出すまい。
なあ、アキ?」

固唾を呑んで暁人の動向を見守っているエスメラルダに、暁人の胸は激しく痛む。

…けれど…

「…申し訳ありません。ビセンテ。
僕には故郷に恋人がおります。
…そのことを思い出した以上、このままエスメラルダと婚約するわけにはいきません。
どうか、お許しください」
人垣から、怒号が激しく飛び交う。

ホセが荒々しく近づき、暁人の襟首を掴んだ。

「貴様!ふざけるな!
エスメラルダ様のお気持ちを踏み躙るつもりか⁈」

「よせと言っているだろう、ホセ」
未だ穏やかな…けれど、どこかひんやりとした微かな苛立ちを感じさせる声で、海賊王は諌めた。

…そうして、ゆっくりと暁人に近づいた。




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