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夜明けまでのセレナーデ
第11章 僕の運命のひと 〜人魚姫と王子のお伽話〜
ビセンテの猛禽類のように鋭く冷酷な表情が初めて一変した。

「エスメラルダ…!何を言うんだ!
この男は、お前を裏切ったんだぞ⁈
お前は、自分を不幸にした男を許すと言うのか⁈」

「…パパ…。幸せって何?
パパはママと約束したから、私を幸せにしなきゃ…てそればかり考えているわ」
「…エスメラルダ…」
母親のことに言及され、冷酷無比な海の王者の褐色の頰が引き攣る。

「ママは私に幸せになって欲しいと願っているわ。
でもそれは、私を愛していないひとと結婚することじゃない。
私だけが愛しているひとと結婚しても、私は幸せにはなれない。
…それはパパが一番良く分かっているでしょう?」
静かに諭すような声には、労わりすらあった。

冷酷非情にして大胆不敵な海賊王の眼差しに、痛ましいような哀しみが満ちる。
「…エスメラルダ…」

…それに…
と、海賊王の美しい娘は、己を鼓舞するかのように勝気に笑った。

「私の幸せは、私が決めるわ」

そうして、暁人を振り返り、健気に笑った。
「…さよなら、私の王子様。
王子様は、早くお国に帰らなきゃね…」

「…エスメラルダ…」
暁人と眼差しが合い、エスメラルダは堪え切れなくなったかのように可愛らしい貌をくしゃりと歪め、その場を駆け出した。

「エスメラルダ様!」
ホセが忠実な騎士のように、その後を追った。

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