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夜明けまでのセレナーデ
第2章 礼拝堂の夜想曲
「薫様!
暁人様からのお手紙ですよ!」
郵便配達人から手紙を受け取った梅琳が濃灰色のナニーの制服のドレスの裾を捌きながら、小走りで玄関ホールに戻る。
二階にいた薫は大階段を一気に駆け降り、震える手でその手紙を受け取った。
…粗雑な薄茶色の封筒…。
恐らくは海軍での配給品なのだろう。
こんな野暮な粗末な封筒を、昔の暁人なら手にも触れなかっただろう。
しかし、その封筒に書かれた端正で美しい筆跡は、紛れもなく暁人のものだ。
震える指先で宛名をこわごわとなぞる。
…縣 薫様…
何度も見た暁人の筆跡が、宝物のように愛おしい…。
胸に熱い想いが込み上げ、薫は唇をぎゅっと引き結んだ。
足元にカイザーが嬉しそうに鼻を鳴らしながら擦り寄ってきた。
「…カイザー…」
…カイザーにも分かるのだろうか…。
カイザーは暁人が大好きだった。
涙で封筒が濡れる前に貌を上げた。
「カイザー、おいで」
短く告げると、大階段を一気に駆け上がる。
カイザーが影のように付いてくる。
「薫様?どうされましたか?」
ホールで心配そうに声をかける泉に叫ぶ。
「屋根裏にいる。
しばらく来ないで」
泉は追っては来なかった。
薫はカイザーとともに、屋根裏部屋に駆け込んだ。
暁人様からのお手紙ですよ!」
郵便配達人から手紙を受け取った梅琳が濃灰色のナニーの制服のドレスの裾を捌きながら、小走りで玄関ホールに戻る。
二階にいた薫は大階段を一気に駆け降り、震える手でその手紙を受け取った。
…粗雑な薄茶色の封筒…。
恐らくは海軍での配給品なのだろう。
こんな野暮な粗末な封筒を、昔の暁人なら手にも触れなかっただろう。
しかし、その封筒に書かれた端正で美しい筆跡は、紛れもなく暁人のものだ。
震える指先で宛名をこわごわとなぞる。
…縣 薫様…
何度も見た暁人の筆跡が、宝物のように愛おしい…。
胸に熱い想いが込み上げ、薫は唇をぎゅっと引き結んだ。
足元にカイザーが嬉しそうに鼻を鳴らしながら擦り寄ってきた。
「…カイザー…」
…カイザーにも分かるのだろうか…。
カイザーは暁人が大好きだった。
涙で封筒が濡れる前に貌を上げた。
「カイザー、おいで」
短く告げると、大階段を一気に駆け上がる。
カイザーが影のように付いてくる。
「薫様?どうされましたか?」
ホールで心配そうに声をかける泉に叫ぶ。
「屋根裏にいる。
しばらく来ないで」
泉は追っては来なかった。
薫はカイザーとともに、屋根裏部屋に駆け込んだ。