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夜明けまでのセレナーデ
第2章 礼拝堂の夜想曲
カイザーとともに窓辺のクッションに座り込む。
ペーパーナイフで封を切るのがもどかしいほどに上手くいかない。
暁人からの手紙だ。
大切に開けなくちゃ…。

…逸る気持ちを抑えながら手紙を開く。

…「拝啓 薫様
なかなか手紙が書けなくてすみません。
僕は元気です。
ようやく我が母艦は小笠原諸島の小さな島に停泊することになりました。
軍機密のために、詳しい話は書けません。
けれど、海軍航空部隊が手紙を配達してくれるので、やっと手紙が出せます。
今しばらくは、船上で訓練と偵察の日々です。
…まるで、戦争など嘘のように穏やかな毎日です。
なかなか慣れない船酔いを除けば…ですが…。

部下たちは僕よりはるかに歳上の人たちですが、皆気の良い連中ばかりです。
頼りない若造の上官の僕を、何かと庇って慕ってくれます」

…さすがは暁人だな…と、薫は微笑む。
暁人の穏やかで優しい人柄は誰からも愛されるのだ。
加えて賢いし勇気もある。
それが我がことのように嬉しい。

…「…これを書いていると、恋人への手紙ですか?と部下に聞かれたので、そうだと答えました。
この間、薫の写真を見せたら凄い美人だと驚いていたよ。
中には薫の写真を欲しがる部下もいた。
…もっとも正装の乗馬服姿だったから、女の子だと思ったみたいだけどね。
薫がいやなら誤解は解いておきます。
今度、教えてください」

「馬鹿。いちいち訂正しなくていいんだってば!」
薫は思わず手紙に向かって叫ぶ。
カイザーが不思議そうに首を傾げた。

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