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夜明けまでのセレナーデ
第2章 礼拝堂の夜想曲
手紙はまだ続いている。

…「昼間は堪らない暑さだけれど、夜の甲板の上はまるでこの世の楽園のようです。
手を伸ばせば触れられそうなほどの満天の星が、藍色の夜空に無数に煌めいているからです。
薫にも見せてあげたいよ。
僕は星明かりだけで本が読めるという経験を初めてしました。

…それから、夜になるといつも薫のことを思い出します。
軽井沢の別荘で、松濤の薫の家で、飯倉の僕の家で、二人でよく星を見ながら喋ったり、ふざけたり…時には喧嘩したり…。
けれど最後は仲良く眠ったこと…。
薫からはいつも綺麗な花の薫りがしたこと…。
カイザーがいつも僕たちの間に潜り込んできたこと…。
…懐かしい…美しい宝石のような想い出を、僕は毎晩思い出しています。

僕の想い出の中にはいつも薫がいます。
離れていてよく分かりました。
僕にとって、薫は命にも等しい存在なのだと…。
だから、そんな君を守るために海軍に入って良かったと改めて思いました。

…薫、愛しています。
誰よりも強く、深く…。
僕は必ず薫のところに帰ります。
だから、僕を信じて命を大切にしてください。
生き抜いて、僕を待っていてください。

数えきれないこの星に君への愛を込めて…。 敬具
大紋暁人」


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