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夜明けまでのセレナーデ
第2章 礼拝堂の夜想曲
「…馬鹿…こんなキザなこと書きやがって…。
検閲されるのに…どうするんだよ…」
薫はぽろぽろと涙を零す。
傍らのカイザーが心配そうに薫の頰を舐めた。
軍から出した手紙は全て検閲される。
おまけに暁人は少尉だから、手紙の内容も自制しなくてはならない。
万が一、軍規に触れるようなことがあったらおおごとになる。
任務の内容や戦況などもちろん報せることは禁じられている。
…過酷な戦いや厳しい訓練の様子など匂わすこともない。
だから暁人は、薫を安心させるように、楽しく美しい言葉だけを記すのだ。
薫への誠実な愛を散りばめて…。
…その裏にあるだろう非情な現実を…薫に見せまいとするかのように…。
暁人は、どんな状況でも薫に果てしなく優しいのだ。


薫は暁人の手紙を、抱きしめながら泣きじゃくる。
…暁人…。
早く…早く帰ってこい…!
鼻を鳴らしながらカイザーが薫に擦り寄る。
カイザーを抱き寄せながら、薫は涙を止めることができなかった。

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