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夜明けまでのセレナーデ
第2章 礼拝堂の夜想曲
「どうした?薫。
何か良いことでもあったか?」
冬の透明な日差しのもと、紳一郎が振り返る。
すらりとしたしなやかな身体、やや線は細く神経質な雰囲気は漂うが日本人形のように整った貌で見つめられる。
「…え?」
我に帰り、慌てて瞬きをする。
「…あの…」
少し迷って口を開く。
「…暁人から手紙が届いたんです…」
躊躇したのは、紳一郎の心情を慮ってだった。
…出征した紳一郎の恋人、十市からはまだ手紙は届いてないからだ。

しかしそんな心配をよそに、紳一郎はそのやや冷たい美貌を綻ばせ柔らかく笑った。
「良かったじゃないか。暁人は元気だった?」
「は、はい。
小笠原諸島の小島にいるそうです。
今は訓練と偵察で平和だって…」
「小笠原諸島か…。
…硫黄島近くだな…」
…真顔で呟くが、すぐに口元に微笑みを浮かべる。
「他には?」
「暁人は優しいから、部下たちにも好かれているみたいです。
それから船から見る星がすごく綺麗で、僕にも見せたいって…」
紳一郎が形の良い眉を跳ね上げる。
「…ノロケか?」
「そんなんじゃないです…。
…でも、あの…すみません…」
口籠もりながら詫びる。
紳一郎は怪訝そうな貌をした。
「なぜ謝る?」
「…十市さんからの手紙はまだきていないのに…僕ばかり…」
紳一郎が途端に吹き出した。
「なんだ。そんなことか」
窓辺から離れ、薫に近づく。
温かな手が肩に触れる。
「気にするな。十市は無事だ。絶対に…。
僕は十市を信じている。
…十市が僕を残して死ぬはずはない」
涼やかな瞳が恋人への熱を帯びて輝く。
薫も力強く頷く。
「絶対元気ですよ。
だって十市さんは森の巨人だから!」
紳一郎が声を立てて笑った。
「ひとの恋人をタイタンみたいに言うな」
そう釘を刺し、気分を切り替えたようにてきぱきと促した。

「さあ、行こう。
寮の生徒たちを紹介するよ」
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