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夜明けまでのセレナーデ
第2章 礼拝堂の夜想曲
扉の中…塔の屋根裏部屋ともいうべきその部屋には、想像以上に広く、さまざまな…古めかしくはあるが上質な趣味の良い家具や調度品が兼ね備えられていた。
味気ない煉瓦造りの壁には年代物のゴブラン織りの重厚なタペストリーがかけられていた。
奥の小さな暖炉は暖かそうな緋色の焔がぱちぱちと燃え爆ぜ、床には厚手のペルシア絨毯が、すべての床に敷き詰められ寒さを感じないように設えられていた。
小さなソファに文机…壁には本棚まで置かれていた。
部屋の奥には小さいながらも寝室があるらしく、クリーム色の紗幕の天蓋が掛かった寝台が覘いていた。
まるでヨーロッパで愛好されているドールハウスだ。
薫はまだ夢を見ているような心地に襲われた。

…さながらそこは、中世の囚われの姫君の隠れ家のようであった。
不意にお伽話の物語の中に引きずり込まれた感があるのは、目の前に佇むこの現実離れした麗人のせいだ。


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