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夜明けまでのセレナーデ
第2章 礼拝堂の夜想曲
「…え?」
思わず問い返す薫を瑞葉は静かに見上げる。
「…誰かに直接その話を聴いたことはありません。
…けれど、ハーフのお祖母様ですら和葉ほど異国めいた貌立ちではありません。
しかも、ひいお祖母様は金髪で翠の瞳ではなかったそうです。
…つまり、母がどこかの外国人と愛し合い…僕が生まれたのでしょう…」
「…そんな…」
自分が不義の子だと、自ら語る苦しみを薫には計り知れなかった。
薫の両親は未だに熱く深く愛し合っている夫婦だからだ。
「…僕は生まれながらに異端児でした。
医師は隔世遺伝が強く出たのだと取りなしました。
実際にそんな例はあると説明しました。
まさか不貞の結果とは断言出来なかったからでしょう。
祖母は僕の容姿を憎み、僕の存在をないものとしました。
父は母の不貞をおそらく疑い…僕を嫌悪しました。
けれど母を問い詰めなかったのは、母の実家が莫大な資産を持っていたからです。
不貞を働いた母でも離婚する訳にはいかなかったのです。
…我が家の家計は火の車で、名ばかりの貴族でしたから…。
母は…」
繊細な美しい貌が寂しげに伏せられる。
「…母は、自分の立場を窮地に追いやった僕にひたすら怯え、関わらないようにしました。
…僕を屋敷に閉じ込めて存在を隠すことに了承したのです。
母にとって僕は忌まわしい記憶の産物以外何ものでもなかったから…」
「そんな…!酷すぎる!」
思わず薫は叫んだ。
思わず問い返す薫を瑞葉は静かに見上げる。
「…誰かに直接その話を聴いたことはありません。
…けれど、ハーフのお祖母様ですら和葉ほど異国めいた貌立ちではありません。
しかも、ひいお祖母様は金髪で翠の瞳ではなかったそうです。
…つまり、母がどこかの外国人と愛し合い…僕が生まれたのでしょう…」
「…そんな…」
自分が不義の子だと、自ら語る苦しみを薫には計り知れなかった。
薫の両親は未だに熱く深く愛し合っている夫婦だからだ。
「…僕は生まれながらに異端児でした。
医師は隔世遺伝が強く出たのだと取りなしました。
実際にそんな例はあると説明しました。
まさか不貞の結果とは断言出来なかったからでしょう。
祖母は僕の容姿を憎み、僕の存在をないものとしました。
父は母の不貞をおそらく疑い…僕を嫌悪しました。
けれど母を問い詰めなかったのは、母の実家が莫大な資産を持っていたからです。
不貞を働いた母でも離婚する訳にはいかなかったのです。
…我が家の家計は火の車で、名ばかりの貴族でしたから…。
母は…」
繊細な美しい貌が寂しげに伏せられる。
「…母は、自分の立場を窮地に追いやった僕にひたすら怯え、関わらないようにしました。
…僕を屋敷に閉じ込めて存在を隠すことに了承したのです。
母にとって僕は忌まわしい記憶の産物以外何ものでもなかったから…」
「そんな…!酷すぎる!」
思わず薫は叫んだ。