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夜明けまでのセレナーデ
第2章 礼拝堂の夜想曲
…扉が開かれ、姿を現したのはすらりとした長身で黒い外套に身を包んだ年の頃は四十ばかりの男だった。
…その肩には舞い始めたばかりらしい淡雪が少し降り積もっていた。

手にした琥珀色のランプが、男の貌を照らした。
…薫は思わず目を見張った。

…なんて…なんて綺麗な瑠璃色の瞳なんだろう…!
まるで地中海の碧のような…サファイアのような…ベネチアンガラスのような…世界中の希少な煌めく鉱石の青を凝固させたような美しい瞳をした男であった。
…美しいのは瞳だけではなかった。
その彫像のような彫りの深く端整な目鼻立ち…特に唇はやや酷薄な薄い形をしていたが、それゆえに何処か官能的な色を孕んでいた。
辺りを払うような美しい異端とも言えるような…微かに危険な薫りすら纏った男であった。

「八雲!会いたかった!」
瑞葉が叫び、男に縋り付いた。
男は愛おしげに瑞葉を掬い上げるようにして抱きしめた。
禁欲的でありつつも狂おし気な低い声が、その男の唇から漏れる。
「…瑞葉様…!」
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