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夜明けまでのセレナーデ
第2章 礼拝堂の夜想曲
静かに足音を忍ばせて、扉の前に近づく。
少し躊躇ったのち、そっと中を覗き込む。

…紳一郎は椅子に腰掛けて、ぼんやりと窓の外に眼を預けていた。
手にはワイングラス…。
どうやら、呑んでいるようだった。
その様子はどこかしどけなく…そして酷く脆そうに見えた。
見てはいけないものを見たような気がして、薫は後退りをする。

気配を感じたのか、紳一郎がこちらの方に貌を巡らせた。
眼が合ってしまい、バツの悪さから黙って立ち去ろうとする薫に、紳一郎は白い手で手招きをしてみせた。

「入っておいで。薫…」
紳一郎の涼やかな瞳が微笑み、形の良い唇が三日月の形に弧を描く。
「…おいで、薫…。
少し、話でもしよう…」
…艶めいた眼差しに誘われるかのように、薫は躊躇いながらもその部屋に脚を踏み入れた。
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