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夜明けまでのセレナーデ
第2章 礼拝堂の夜想曲
「やめてください!
紳一郎さん、酔ってますね?」
…少々の性的な戯れは、学院で経験済みだ。
少女のような容姿が仇となり薫は毎日のように上級生に付け狙われ、押し倒されそうになることなど日常茶飯事であった。
そんな時もさり気なく救出してくれたのは、紳一郎であった。
だから紳一郎が本気で薫を犯そうとしているのではないことは分かっていた。
それが証拠に紳一郎の手は、まるで薫の未熟な身体を揶揄するかのように触れはするが、それ以上のことをしようとは決してしなかった。
けれど、こんな度が過ぎた戯れは紳一郎らしくなかった。

紳一郎はくすくす笑いながら、薫の身体を優しく抱きしめた。
「…酔っていないよ。
…これくらいで酔えたら…どんなに楽だろうな…」
のしかかる紳一郎の身体は、意外にも軽くて…どこにこんなに自分を押さえつける力があるのだと驚くほどだ。

「…でも、酔っ払っていることにしてくれ…。
明日になったら…綺麗に忘れるから…。
薫も…忘れてくれ…」
「…紳一郎さん…?」
紳一郎の冷ややかな蒼ざめた月に似た美貌が、夢見るような表情で薫を見つめる。
…いや、薫を見ているようで、見ていない。
まるで独り言のような…紳一郎の言葉がやや膿んだような甘やかさを帯びながら、その形の良い唇から溢れ落ちる。

「…十市はね…僕をいつも酷く性急に抱くんだ…。
あの逞しく鋼のような熱い身体で…僕を押し潰すようにのしかかって…。
服はいつも引き千切られて…まるで毎回犯されるみたいで…ぞくぞくした…。
…服を脱がされたまま…息が止まるような激しく長い口づけをされて…。
僕はいつも酸欠で眩暈がしそうになるほどだった…」

紳一郎の手が、薫の白く華奢な顎を持ち上げ…そのまま、薫の桜色の唇をしっとりと塞ぎ、口づけを深くしていった…。

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