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夜明けまでのセレナーデ
第2章 礼拝堂の夜想曲
変則的なノックののち、塔の中の部屋から瑞葉の小さな返答が聞こえた。

「…瑞葉さん。薫です。朝食をお持ちしました」
扉が静かに開かれた。

…中から現れたのは、象牙色のレースの裾の長いドレスに紅色と深緑色の格子のストールを肩に掛けた瑞葉であった。
…八雲の姿がないのに、密かにほっとする。

…「今頃、二人はセックスしているからさ」
紳一郎の昨夜の言葉が脳裏に蘇る。
慌てて頭を振り、笑顔を作る。
「おはようございます。瑞葉さん。朝食をお持ちしました」
「ありがとうございます。
お手数をお掛けして、申し訳ありません」
受け取りながら、恐縮する。
「いいえ。…中までお持ちします」
部屋に入り奥の寝台が無人なのを確認し、安堵する。
「八雲さんは?」
「明け方に屋敷に帰りました。
…ここに来るのは内密ですから、朝までには戻らなくてはならないのです」
その楚々とした美しい貌からは、淫らな行為の欠片も想像することは出来ない。

…本当に、二人はセックスしていたのかな…。
紳一郎さんの深読みじゃ…。

赤々と燃える暖炉の側の小さなテーブルにトレーを置く。
「…温かい内に召し上がって…」
すぐ近くに瑞葉の透き通るように白くほっそりとしたうなじが目に入った。
…華奢な…折れそうにか細く白いうなじに散らされた紅い花弁のような痕…。

薫は息を呑んだ。
視線を感じたのか、瑞葉が慌てて美しい手でうなじを抑えた。
「…すみません…お見苦しいところをお見せして…」
エメラルドの瞳が羞じらうように伏せられる。
…その幼気な風情は瑞葉に対する庇護欲と、同時に薫の中に僅かに燻る加虐性に似た欲望を刺激した。
それはあたかも傷つきやすい美しい花を、敢えて己れの手で握り潰したいような欲求に近かった。

「…瑞葉さんと八雲さんはどういうご関係なのですか?」
はっと美しいエメラルドの瞳が見開かれる。
「…それは…」
「ただの執事と主人の関係ではありませんよね」
…無垢で儚げなものを己れの手で追い詰めてしまいたい衝動…これは一体どういう感情なのだろうか…。
瑞葉に肉欲を抱いているわけではないのに…。

…そうして、自分でも御し難い感情に襲われている薫の耳に飛び込んできた言葉は、俄かには信じられないものであった。

震える朱い唇が、恐ろしい秘密を語り始めた。

「…八雲は僕の…父親です…」



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