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夜明けまでのセレナーデ
第2章 礼拝堂の夜想曲
「…なんなんだ…。本当に…もう。
どうなってるんだよ」
薫は学院の正門前の雪掻きをしながら、独り言を呟き続ける。

…ここに来てから頭がぐちゃぐちゃだ…。
薫はシャベルの手を止め、ため息を吐く。
紳一郎の十市との赤裸々な性の告白…そして…夜の甘く濡れた戯れ…。
塔の上のラプンツェルと闇の王は、実の親子であった…。
しかも、彼らは愛し合っているのだ…。

…「運命の愛の前で、人はあまりにも無力なのだよ」

紳一郎の言葉が蘇る。

…そうなのかな…。
人の道に背いてまでもなお、貫きたい愛が…
この世にはあるのだろうか…。

考え込む薫の耳に、馴染んだ犬の鳴き声が響いた。

「…カイザー?」
薫ははっと立ち上がり、正門の奥に眼を凝らした。

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