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第1章 成り行きのままに

「ひゃっ」と驚いた言葉と立ち上がった事により綾香の存在に気がつかれたようで、
ばか野郎と言った相手は彼女に視線を向けていた。

目にかかる前髪、サイドは耳の下、後ろは肩にかかるくらいのウェーブがかった茶髪。
学ランを着ているという事は綾香とたいして違わなそうだ。

『じろじろ見てんなよ』

そう言われた綾香は頭を下げて謝った為に相手は驚いた表情をしたが、
関係ないというように手にしていた紙をぐしゃぐしゃに丸め近くのごみ箱に放り後ろを向いた。

『ダメなんじゃない？大事なものなんでしょ？』
綾香はそう言い金網の丸いごみ箱から紙を取り広げた。

それは中学の期末試験らしく２年・中川悠哉と書いてあり彼女よりひとつ年下だという事がわかった。

『問１はａ＝３、問２はｘ＋y＝２、問３は８％』
綾香はほとんどが間違いだらけの答えの正解の方を言っていた。
『人のテスト見てんじゃねえ、返せったらっ』
中川は振り向き彼女が手にしている紙をひったくって破いてく。

『どうして？』
『あんたが見るから』

『お父さんやお母さんに見せる前に破いていいわけないわ』
『５点の答案になんの価値もないから』

『どうして？』
『バカだっていう証拠だから』

『バカなんて決めつけないで』
『―――――…』

「バカなんて決めつけないで」という綾香のセリフに中川は今までの無な表情を和らげたようにみえた。

『１年生は早く帰りな』
『えっ？』
『あんた年下だろ』

『あたしあなたより１年年上ですっ』

『…ふぅん』

笑いを堪えるかのように上から下まで見られて綾香は怒っていいのか笑えばいいのかわからなく視線をそらした。

『とにかく帰りな』