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第5章 似ているから惹かれ合う

『茶髪くん…』
綾香はハンカチで涙を拭いたがまた頬に伝う涙に他所の家庭への苛立ちとやるせなさに高ぶる感情があるのかと驚きさえ感じハンカチを落とした。

『優しいんだ…泣くなよ…俺が惨めで情けなくなるから…』
落ちたハンカチを拾い自分のポケットに入れ彼女には中川の指先で涙を拭ってやった。

『あたしのハンカチ…』

『あんたが泣いてくれた記念日に俺がもらう…まじないみたいなものさ…』

『おまじない？』

『親父らに嫌味を言われた時に思い出す事にするから…』

『おまじないって…携帯があるのに？』

綾香は携帯があれば話したい時に話せてラインや画像などで近くなれるのでわざわざまじない等という手段等となくてもいいのではないかという感じだろうか。

『森部先輩の物を持っていたい口実なんだけど……嫌なら返す……』
ポケットから出したハンカチは握られたせいでくしゃくしゃだ。

『イヌネコシリーズまた買ってもらうから持っていて…』

イヌネコと聞いて中川はデフォルメされたかわいいイヌネコイラストを見て笑った。

『女の子はこういうのが好きなんだ？姉貴のは色気も可愛さもないシンプルな布地だけ』

『布地？ハンカチなのにおかしいわ』

『…笑った…俺森部先輩に惹かれてる…』

見上げる綾香と見下ろす中川。
中川からの不器用なキスーーー！

合わさる唇と唇だけのぎこちないキスだがお互いにファーストキスだけあり忘れられない瞬間だった。

結…
あたしファーストキス茶髪くんになったよ…
どうしていいかわからないけど目を開けられないくらい動揺してる…

あたしこれから真っ直ぐに茶髪くんを見れるのかしら？



『送ってく』

『でも…』

『あんた泣いてるから…』

『でもお家の人心配…ごめん…』

綾香は中川家の人は心配等しないのかもと言葉をきり謝った。

送って行くという中川、慎吾以外に帰る異性との時間には嬉しささえもあるが綾香は彼を心配した。

『まわり道では？』

『平気だって』

中川は片手を差し出し綾香に手を繋げというリアクションをする。

歩いて帰宅し森部家の母親のり子は中川を招き入れ親子丼を作ってもてなした。

『ありあわせで悪いけど綾香を送ってくれたお礼の気持ち、男の子はご飯前にもお腹すくでしょ』

『……ありがとうございます…ありあわせなんてそんな…いただきます』