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ピアノ
第2章 恋
だから、幸一がうまく出来なければ、レッスンの時間など関係なく、出来るまで、時には夜11時を過ぎることもあり、そんな時は家まで車で送った。
上達すると、「そうよ、幸一君、いいわよ」とオーバーなくらいに喜び、抱きついて褒めた。
15歳の少年は、啓子のそんな振る舞いに戸惑うこともあったが、「こんなに熱心に教えてくれる先生はいないわよ」と母親に言われ、啓子にとことんついて行こうと決心した。
季節は冬に変わり、啓子のレッスンは一層熱を帯び、週末などは深夜に及ぶことなど度々。だが、幸一の母親は啓子を信頼し、全て任せてくれた。
そして、年が明け、幸一は16歳の誕生日を迎えた。
この日、啓子は演奏会用のドレスを着ていた。
「幸一君、お誕生日おめでとう」
ケーキで祝った後、寄り添っての連弾。鼻を擽るいい匂い。小さい時からピアノ一筋で、女の子と付き合うことなんか無縁だった。
そんな幸一にとって啓子は眩しかった。手が届かない憧れの「ピアノの先生」に恋してしまった。初恋だ。