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はじめてでドタバタな夜と、その後のこと
第1章 寺井夏美は、なにを考えているのだろう?
「ヨシ! 終わった」
寺井が作成したレポートの草案を自分なりにアレンジして、とにあえずレポートは完成した。だけど――
「寺井?」
なんの反応が無いことを不思議に感じて、寺井の方を振り返ってみる――と。
「なんだよ……」
くう、くう――と、それは静かな寝息だった。
先にレポートを仕上げていた寺井は、机に突っ伏したまま、その意識を夢の中へと旅立たせている。
「まあ、ね」
時計の時刻を見て、僕は苦笑した。もう真夜中の二時を回ってる。僕は椅子から立ち上がると、丸めていた腰をさすりつつ、ひとつ伸びをした。
レポートを仕上げた充足感は、思いのほか爽やだから。ちょっと前にあった邪な期待は、今は随分と薄らいでいる。
だから疲れに任せて、このまま僕も寝てしまえばいいのだろう、とは思った。
「……」
寺井の傍らにきて、その寝顔をじっと見つめると、そのまま動けなくなってしまう。
机に押しつけられ曲がった眼鏡を、起こさないようにそっと外した。
こんなにも近くで見たことのない素顔。一度も見たことがない寝顔。
改めて見つめた寺井夏美は、とても可愛い顔をしていた。