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はじめてでドタバタな夜と、その後のこと
第1章 寺井夏美は、なにを考えているのだろう?


「きっと、気のせいだ」

 止めどなくパルスを打ち続ける心臓。それに反するようにして、僕は呟く。

 メイクなんてしてない、少年のような顔。半開きの口元には、ヨダレが滴っている。

 それでいて肌はきめ細やかで、目鼻も輪郭も、言いようのない柔らかな丸みを帯びていた。

 当たり前だけど、やはり女の子だ、と思う。

「……」

 僕は震える指先をそっと、寺井の頬に伸ばしてゆく。

「――ん」

 とても微かな反応が、僕を大げさにドキリとさせる。たじろいだ指先で、頬にかかる前髪を撫ぜるようにして、おそるおそると耳の上に流した。

 サラリと滑らかな髪の質感が、また新たな実感をくれる。

 女子に免疫がないとか引っ込み思案とか言ってみても、頭の中では妄想が常に肥大していた。コミケでエッチな同人誌を買いあさる、そんな僕なのだから。

 男女のこと……恋愛……セックス、とか。

 そんなコトだって、当然ながら頭の中から消せない。

「……」

 僕がいて、彼女がいるだけのこの部屋は、とても静かだった。

 山岡も加藤も、今日はいない。寺井はさっき、意味深なことを口にしたりしていた。

「……」

 思わずゴクッと、僕は喉を鳴らす。

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