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はじめてでドタバタな夜と、その後のこと
第1章 寺井夏美は、なにを考えているのだろう?
どう考えても状況は整えられているように思う。僕と寺井の距離が、今はゼロであるように感じた。
もう一度、寺井の柔らかな髪を撫でる。次は肌に触れたいという、強い衝動が訪れていた。
いっそ、このまま抱きしめてしまえばいいのだと、直感する。きっと、寺井も嫌がらないような気がした。とても勝手だけど、そんな風に確信する。
寺井を起こして、モヤモヤとした気持ちの部分を話そうとすれば、きっと僕は上手くできないだろう。その瞳に見すえられ、気後れする自分が手に取るようにわかるから。
だから、妄想と現実を隔てる薄っぺらな一枚の膜を破るのは、きっとそうするしかなかった。
なのに――じっと、健やかな顔を眺めて数分。
僕は立ち上がるとベッドの上から薄手の毛布を手にして、それを寺井の肩にそっと被せた。
「お疲れさん……」
そう告げた言葉は、優しさという誤魔化しに彩られた、意気地なしの証だ。
僕は結局、衝動だけでは妄想と現実の狭間を、飛び越えることができなかった。
そうして、寺井の傍から離れようとした時である。
「――うわっ!」
僕は突如として床に押し倒され、驚きに満ちた声を上げた。
この夜を、このままで終わらせなかったのは、彼女の方だった。