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はじめてでドタバタな夜と、その後のこと
第1章 寺井夏美は、なにを考えているのだろう?
倒れ込んだ僕の身体の上に圧しかかった彼女は、頭からすっぽりと被った毛布で光りを遮断している。咄嗟にそうなったものか、そうした狙いでやったのかわからないけど、結果的に僕の視界は真っ暗になった。
毛布で覆われた暗闇の中で、それでも二人は密着し、互いの息遣いがその距離の近さを物語っていた。首筋にかかる吐息が、なんとも言えずに艶めかしいものだと感じる。
その姿は見えなくとも、そうして重なった二つの身体が、僕と寺井夏美である現実を頭の中で想像し、胸の高鳴りを覚えた。
それほどまでに、寺井に押し倒された、今の状況は想定外である。奇想天外とすら、感じられた。
「て、寺井……ね、寝惚けてない?」
言葉を詰まらせ激しい動揺のまま、僕は彼女に訊ねた。
すると、闇の中で寺井の声が答える。
「あんまり、じれったいから。ホントに寝そうだった」
「え? じゃあ……」
「たまには、肉を食べたらいいと思うよ――ねえ、草食系クン」
すぐ近くで、寺井がクスッと笑ったのが、よくわかった。
肉なら大好物だけど、そんな風に答えようとしてやめる。
それでも彼女の気持ちは、やはり謎すぎるから。こんな場合の正しい対処法なんて、この僕に思いつくはずがないのだ。