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はじめてでドタバタな夜と、その後のこと
第1章 寺井夏美は、なにを考えているのだろう?
対する僕はといったら、寺井ほど超然としていられるはずもなくて……。
「えっと……どうする?」
「なにを?」
寺井は、僕の疑問に疑問で返す。だけど少しすると、僕が聞きたかったことを察したみたいだ。
「どうするもなにも、やるしかないから。二人だけでも進めないと、提出までもう時間ないよ」
「わかってるけどさ。二人だけとか……」
「私と二人だと、いやなの? もしそうなら、はっきり言って」
黒縁眼鏡の綺麗に透き通ったレンズ越し。まるで猫のような大きな瞳に見すえられ、僕は焦った。
「そっ、そうじゃなく……山岡と加藤が、サボりやがって……とか思っただけで」
「まあ、あの二人もデータはある程度、まとめてくれたみたいだし。残りはたぶん、二人でもできると思うんだ」
「まあ……それなら」
彼女に促されて、僕たちは部屋の奥へと向かった。
季節は初夏。本日の天気は晴天。昼の間に容赦なく差し込んだ日差しが、夕刻を過ぎた現在でも、室内の気温を高温のまま保っている。とはいえ真夏の真の酷暑を控えた今、まだエアコンの力に頼るのは時期尚早と思われ。
まあ、単に電気代をケチっているといえば、それまでの話だけど。とにかく、熱気のこもった部屋で、僕は寺井と二人で分担しながら作業に取りかかっていた。