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はじめてでドタバタな夜と、その後のこと
第1章 寺井夏美は、なにを考えているのだろう?


「は?」

 僕は思わず唖然としている。

「今日やらないと、間に合わないって言ったよね。だから、最初から泊るつもりで――ほらコレ。用意だってしてきちゃったよ」

 寺井は当然のようにそう話すと、自分の脇に置いていたバックパックを手に取って見せる。そうしながら真っ直ぐな瞳を向けると、僕に訊ねた。

「泊まるの、ダメ?」

「いや、だって……さあ」

「以前にも、この部屋で一晩中ゲームしたこととかあったじゃん。今更なにか不都合でもあるの?」

「あ、あの時は……山岡と加藤もいたわけで。今は、二人だけだから……」

「二人だと、どうして?」

 寺井はとても落ち着き払って、更に質してくる。

 対する僕は口ごもりながら、こんな風に答えるのが精一杯だった。

「それは、やっぱ……男と女、だからに決まってる……じゃん」

「ああ、うん。まあ、そっか」

 僕が絞り出した言葉を一旦受け止めると、寺井はスッと立ち上がり、ゆっくりと僕の傍らに立った。

「一応は私のことも、そんな風に意識してくれるんだ」

「そんなの……当然だよ」

 男と女であることなんて、確認するまでもないことだって、僕はそんな意味で言ってる。そんな程度だから、寺井の態度にいちいち惑わされるのだ。

「じゃあ、お互いわかってるということで、いいよね?」

「え? うん……」

 僕は真っ白な頭のまま、そう頷くしかなかった。寺井が確認した意味なんて、一ミリもわかってないのに……。

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