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はじめてでドタバタな夜と、その後のこと
第1章 寺井夏美は、なにを考えているのだろう?
「じゃあ、再開。引き続きデータのまとめ、よろしく」
それでも彼女が珍しく見せた微笑みは、とても意味深だと思えている。
そうして作業に戻ってから、数時間の間。
「コレで、どうかな?」
「うん、いいんじゃない」
僕たちの間で交わされた会話は、たったのそれだけ。
僕が表にまとめたデータを元に、寺井がレポートの理論を組み立ててゆく。はっきり言って、こちらは助手のような作業だけど、実際に勤勉な寺井の方がそういった点では長けていた。今もとても真剣な様子で、レポート作成に集中している。
それに引きかえ単調であるはずの僕の作業は、さっきから一向に捗ろうとしない。
「……」
僕は時折チラリと寺井を見ていた。そうしながら、さっきの言葉の意味を考えたりして。
化粧気のない横顔は、いつもとまるで変わらないはずなのに……。
すっきりとした白い頬の素肌。入学時にショートだったイメージの髪は、いつのまにかミディアムヘアといった感じの長さにまで伸びている。その黒髪を掻き上げる仕草と、その時に首筋に見つけた小さな黒子。
悩み考えて、ふっと吐き出される吐息とか。
そんな、ひとつひとつの些細なものが、否応なく僕の視線を釘づけにする。
「ねえ――手を止めないで!」
突如として差し向けられた厳しい言葉と視線に、僕は思わずギクリとした。