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はじめてでドタバタな夜と、その後のこと
第6章 予期せぬオマケと、それからの日常とは?
◆ ◆
ピン――と、鼻先を弾かれた感覚を覚えて、僕は目を覚ました。
目覚めたからといって、それが朝ということではなくて。カーテンの隙間から差し込む陽射しは、もう随分と強烈なものだった。
まだ眠そうに目を擦った僕に、彼女は言う。
「おはよ」
それはいつもと同様の、寺井夏美によるあっさりとした挨拶だった。
「うん……おはよう」
薄目で眺めた寺井は、ベッドの傍らに立っている。当たり前だけど、すっかり衣服を身に着けると、持参したバッグを片手にしている。どうやらもう、帰ろうとしているみたいだった。
「起こさずに行こうかとも思ったけど。一応はね」
「え、うん……」
「とりあえずレポートの方は、お疲れ様でした、と」
寺井は言って、改まったようにペコリとお辞儀をする。
「いや、こちらこそ。いつもお世話になっております」
もう随分、遥か前のことのように感じるけど。寺井がいなければ、こんなに早くレポートを完成できなかっただろう。
僕たちは互いに、とても他人行儀な言葉を交わした。すると――
「では、そういうことで――」
寺井は軽く片手をあげると、そのまま徐に僕に背中を向けた。
それを見て、僕は慌ててベッドから這い出ようとするのだけど。
「ちょっと、待っ――てっ!?」
毛布に包まったままの僕はバランスを崩して、派手に床の上へと転がり落ちた。