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はじめてでドタバタな夜と、その後のこと
第7章 ヘタレな僕と、不機嫌な彼女のその後は?
というのも本日行われる実験は設備の数量の関係で、いつもの班編成が崩され、僕と寺井は他の班に組み込まれてしまったのである。寺井と一緒なのは幸いだと胸を撫で下ろすのだけど……。
「キミ、名前は?」
そう聞いてきたのは、その班を取り仕切っているらしい人物だった。
「あ、僕は――」
と、僕が名前を言おうとすると。
「男の方はどうでもいい」
茶髪のツーブロックに片耳ピアスという、チャラさ全開の彼は、僕を押しのけるようにして寺井の方に歩み寄った。
はっきり言って、僕の苦手なタイプである。山本や加藤と離れてしまったことで、只でさえアウェー感が高まっているのに、嫌な感じだ。
それでも自分だけのことなら、まだよかったのだけど……。
「そっちの彼女、お名前は?」
「寺井夏美」
寺井が素っ気なく本名を答えると。
「夏美ちゃんか――じゃあ、ナツミンね」
ナ、ナツミン……?
「いつも講義で見かけて、気になってたんだ。ということでナツミン、今日はヨロシク!」
はじめて話す女子に対し、どういう神経をしていれば、ここまで馴れ馴れしくできるのだろう。僕は彼のことが、自分とは全く違う生物のように感じた。そしてその後の実験実習においても、彼はなにかと寺井に絡んできていた。
「ナツミン、そっちの回路の接続できる?」
「ナイス、ナツミン!」
「ナツミンって、めっちゃ有能じゃん」
「……」
そんな様子を傍目で見ていた僕の内心が、穏やかでなかったのは言うまでもないだろう。彼が「ナツミン」と口にする度に、大きないら立ちが募っていた。
それでも実験を積極的に仕切っているだけあって、それなりに頭はよさそう(チャラいけど)。実際この日の実験課題は彼と寺井を主として、滞りなく進められた。
結局は、僕がグズだからいけないのだろう。徐々に、そんな自己嫌悪が膨らむ。