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はじめてでドタバタな夜と、その後のこと
第7章 ヘタレな僕と、不機嫌な彼女のその後は?
え……?
突然のことに、状況を理解するのに時間を要した。僕は叩かれた頬を押さえながら、呆然と立ち尽くしている。
それは意外過ぎる展開。僕の頬を平手で打ったのは、僕に掴みかかる寸前だったチャラ男くんではなくて、僕が庇ったはずの寺井だったのである。
あまりに予想外だったためか、怒りを顕わにしていたチャラ男くんの方まで、なにが起きたのかと呆気に取られていた。そして状況を把握すると、高らかに笑いはじめた。
「アハハハ! なに、それ? ウケるんだけど。なんか張り切って絡んできたけど、お前の勘違いらしいぞ。なあ、ナツミ――」
そう振られかけた話を最後まで聞くことなく、寺井は僕に向かって言った。
「どうして、もっと早く来てくれないの!」
「だって……」
「だってじゃないでしょ! 今はもちろんだけど、先週からずっと待ってたのに……こっちだって、とても不安だったんだから!」
そう訴える寺井の表情には、いつものクールさは影を潜めている。僕に向けたレンズ越しの大きな瞳が潤んでいるのを見て、僕は改めて寺井が女の子なのだと思うのだった。
「寺井……ごめん」
こんな情けない僕で本当に申し訳ないと心底思う。だからこそ、これからは――。
「あのぉ……ナツミン、どういうこと?」
わけがわからないといった感じで僕たちのやり取りを見ると、チャラ男くんが不思議そうに聞いた。
そんな彼に、僕は言う。
「とりあえず、ナツミンて呼ぶの、やめてもらっていいですか」
「えっ……もしかして迷惑だった?」
チャラ男くんが聞くと――
「そうですね。かなり、寒気を覚えていました」
寺井はとどめを刺すように、きっぱりと言った。