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戦場に響く鈴の音
第1章 謀叛



妻子などは連れて行けぬ戦場にまで小姓を伴うような城主であった場合、数ヶ月に及ぶ性的処理を小姓で対応してる者も少なくはない。

昨今では夫婦中が破綻してる場合、城内でも小姓を愛玩する城主が横行してる。

そんな歴史の中で愛玩目的だけの小姓の身分は異常なほどまで軽んじられ、それは人身売買にまで発展するほどに状況が悪化しつつある。

今は戦国の世であるが故に孤児も多い。

身寄りの無い孤児を拐っては城主などに治まる裕福な武将や貴族に売り付ける輩が後を絶たない。

見せ物のように綺麗な顔をしただけの小姓を何人も抱えては自分の権力や財力を振りかざす者も増えた。

そういう行為を忌み嫌う御館様から俺は本来の小姓の立場とは何たるかを学び、御館様に忠義を誓う家臣となるまでにちゃんと育てて貰えた。

梁間のような城主の小姓が忠義を持つまでの小姓に育成されているとは考えにくい。

梁間に忠義など持たぬ小姓。

その代わりに行き場を失くし今後の自分の身の振り方を呪い、やけを起こしてる可能性を持つ小姓がこの寝所の向こう側で俺達の存在に対して牙を向けていると感じる。


「さっさと出て来い…、大人しく投降するならば生命の保証だけはしてやる。」


刀を襖に向けたまま俺は襖の向こう側に語り掛ける。


「黒崎様…。」


俺の背後で雪南と直愛も刀を構える。

スっと襖が横へと移動する。

開かれた襖の向こう側には暗闇が広がる。

その暗闇の中に光る2つの小さな灯火…。

その灯火は真っ直ぐに俺に向けられた視線…。


「雪南、直愛、刀を収めろ。」


俺は自分の刀を腰の鞘へ戻す。


「黒崎様っ!」


雪南と直愛は同時に叫ぶ。


「相手はまだ子供だ。」


状況の判断が遅い2人を叱責する。

小姓の瞳に宿る灯火は強いが背丈から見て、まだほんの子供の視線の高さだと判断した。


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