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戦場に響く鈴の音
第1章 謀叛
梁間が流した血の変色具合から見て俺が火を放つ前には自害していたと思われる。
要するに2万5千の軍勢を見ただけで梁間は逃げられぬと判断を下し自分の兵士を見捨てて自害した最低の城主だという事だ。
直愛だけが名誉を回復する武功を挙げ損ねたと怒りを露わにギリギリと歯軋りする。
直愛の武功は別の形で作ってやる必要がある。
だが、その前に…。
「そこに控える者、城主の敵と仇するつもりが無いなら我らの前に出て来い。」
俺は寝所の奥にある戸襖に向けて刀を抜く。
襖の向こう側に存在する気配からは殺気を全く感じはしないが俺の本能が警戒しろと言わんばかりに首の付け根辺りでチリチリと嫌な痛みを発する。
城主の寝所で向こう側があるとすれば、それは小姓か兵士が控える部屋である。
小姓とは実に厄介な存在の場合が多い。
城主と小姓は親子以上の関係を築く。
幼き頃から城主に対し絶対的な忠義を尽くす事を強要されて育つ為に、元服する頃には城主を絶対的主と信じて忠義に厚い家臣となる。
かく云う、この俺も元服までの8年を大河城主の小姓として御館様の寵愛を受けた一人である。
小姓の普段は学を学び、武を磨き、主従に教えを乞うのが生活の基本となる。
しかし、常に城主の傍に存在する特別な立場であるが故に自分の生命を引き換えにしてでも城主に尽くす生活を強いられる。
四六時中、寝食を城主と共にするという事は城主の食事の毒味に使われ、城主に刃が向けられた時には迷わず城主の前に出て自分が切られる覚悟を持って城主に仕える事になる。
その為、城主は主である証が刻印された宝刀を小姓に預け、常に自分の傍目に小姓を侍らせる。
そして城主から小姓への一番最悪な寵愛は性的関係に至る繋がりを小姓と築いてるパターンだ。
人前に連れ歩く小姓は比較的に顔の綺麗な者や何らかの特徴が自慢になるが選ばれる。