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戦場に響く鈴の音
第8章 開戦



問題は乾季まで万里が待つかが鍵だった。

この部分は俺の勘に任せると雪南は言い残して天音へ去った。


「つまり、神路殿の勘がハズレた時は…?」

「当然、全滅だな。」


俺の言葉で直愛だけでなく、話を聞いていた須賀までもが身震いをしやがる。

そういう意味ではやはり若造である俺は信用のない大将なのだろう。

そんな風に呑気な話をしてる間に、対岸には2万を超える兵が渡り着る。

対する万里の残党兵は5千も無い。


「前に出るぞ…。」


1千ほどの兵を連れて前線へ向かう。


「万里のオッサンっ!生きてるか?生きてるなら諦めて投降しろっ!」


今度はこちらの方から万里の軍に向けて揺さぶりを掛けてやる。

投降すれば由との和解に入る。

但し、それは万里の命乞いを意味し、和解の内容は一方的に蘇の言い分だけの和解となる。

西元を燃やした責任くらいは万里に取らせてやりたいとか俺は呑気に考える。

俺の揺さぶりに答える為にボロボロになった獅子が由の軍勢の前に出る。


「ふざけるなっ!黒崎の若造がっ!あんな卑怯な手を使いやがってっ!」


夕日を浴びても土石流の泥に塗れた黄金の甲冑はもう輝きを見せる事はなく、ヤケクソの万里が顔を真っ赤にして吠えて来る。


「卑怯もへったくれも無いだろ?そっちは火を使って城を焼いた。俺は水を使ってお前の軍勢を潰した。お互い様って奴が戦ってもんだ。投降するつもりが無いならオッサンの生命は俺が貰い受けるっ!」


万里に開戦の布告をすれば俺は馬の腹を蹴り、早々に自分の兵の後ろへ回り込む。

兵は俺が戻った事を確認するや否や、万里目掛けて一斉に矢を放つ。

この瞬間、笹川対黒崎の開戦の火蓋が切られた。


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