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戦場に響く鈴の音
第8章 開戦
どうなった?
目を凝らし万里が居た辺りを見渡す。
「「うぉおおおっ!!」」
兵の歓喜の歌声が響く。
風に乗り
「由の大将、笹川 万里が首っ!蘇の副将、奥州は直愛が討ち取ったなりっ!」
とふれ回る伝令の声が流れて来る。
「「ぉおーおおーっ!!」」
控えてた兵が雄叫びを上げる。
「引き上げるぞ。」
須賀を伴い俺は戦場から踵を返す。
やっと終わった。
俺の任は終わりだと安堵する。
戦に望むまでは俺でも、それなりにテンションが上がる。
だが戦が終われば勝者は大量殺人の結果を背負い、何も知らない奴らから『魔王』だの『残虐者』だの好き勝手に言われる覚悟を持たねばならぬ。
土石流で流された由の兵は9万近い。
戦場に対する弔いの気が起きたとしても、兵達のように戦場で宴をする気にはなれない。
早々に川を渡り西元跡の本陣へと戻れば俺の知らない兵が増え、本陣も勝利の雄叫びが上がってる。
その真ん中に立つ漢に俺は馬の上から嫌味を言う。
「随分と遅かったな。」
そいつは俺の嫌味にニヤリと笑う。
「私が居ないとお寂しかったですか?黒崎様…。」
主である俺に平気で嫌味を返す雪南に安心を感じる。
「鈴が負傷した。診てやってくれるか?」
「戦でですか?」
「いや…。」
馬を降りて雪南に状況の説明をする。
「なるほど…。だから貴方を1人で行動させるのはまだまだ不安なのですよ。」
「俺のせいかよ…。」
「皆が皆、私のように黒崎様の事を理解してる訳ではありませんからね。」
「お前が帰って来るのが遅いからだろ。」
「こちらは兵だけでなく、天音で使った一般作業者も連れてるのですよ。そんなに早く着く訳がありません。」
一般作業者を連れてでも、随分と早く着いた方ではあると思うから雪南が俺の為に出来るだけ急いで西元入りをしてくれた気持ちだけは伝わって来る。