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戦場に響く鈴の音
第8章 開戦
戦場の後処理が済めば、作業者達は西元の築城に取り掛かる。
新しい西元の設計は既に済ませたと雪南が言う。
俺の天幕に入り床に横たわる鈴が
「雪南っ!」
と俺よりも雪南へ先に声を掛ける。
「鈴、お前の主は黒崎様だ。」
雪南が鈴に小姓としての振る舞いについて説教をしながら鈴の腹の具合を探る。
「血の混じった小便や糞は出てないか?」
雪南の質問に無表情な鈴が横へ首を振る。
それでも肋骨の辺りに雪南の手が当たれば表情の少ない鈴でも流石に顔を歪めて雪南を見る。
「内蔵は無事だとしても、やはり肋骨は折れてるな。固定する為にサラシを巻くから着物を脱ぎなさい。」
雪南がそう言えば鈴が大人しく上半身だけ着物を脱ぐ。
真っ白な肌…。
ピンク色の乳首…。
その綺麗な身体に痣が出来てる痛々しい姿と自分の身体を雪南に平気で晒す鈴に俺だけが苛立ちを感じる。
「サラシなら俺が巻いてやる。」
あまり雪南に鈴の身体を触らせたくない俺に雪南は
「黒崎様は不器用だから迷惑なだけです。」
と言い放ち、さっさとサラシを巻いてしまう。
「鈴、熱がある。それに痛いなら痛いと黒崎様にちゃんと言わねば伝わらぬ。」
雪南が鈴を叱る。
「熱があるのか?」
小さな子は体温が高いのが当たり前だと思う俺では鈴の熱にまで気付いてやれない。
保護者として自分の不甲斐なさに凹んで来れば
「そりゃ、骨が折れてれば熱は出ます。」
と雪南が呆れた声を出す。
雪南は痛み止めの薬を調合して来ると言い天幕から出た。
「鈴、やはり痛いか?」
鈴の床に腰を掛け、頭を撫でて聞いてみる。
気まぐれな仔猫は俺の質問には答えず
「雪南は医者なのか?」
と質問を返して来る。