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戦場に響く鈴の音
第8章 開戦
羽多野は武しか出来ぬ不器用な漢だからと義父に言われ俺の双刃刀の指南役を長く務めた漢だ。
怪我で天音に引く負傷兵になった結果を羽多野はひたすら恥だと嘆く。
「お前が無事なら良かった。新しい西元の築城までは再びお前に任せるつもりだ。」
「勿体なきお言葉です。」
新しい城主を決めるには流石に御館様の承認が必要になる。
それまでは西元が黒崎の物だと示す為に義父のお気に入りである羽多野に留守を任せるのが一番だ。
「もう1人、黒崎様に会いたいと言う者が…。」
雪南がそう言えば、待ってましたとばかりに羽多野の後ろから飛び出て来る漢に俺はうんざりする。
「お前…。」
何故、ここに居ると言いたい。
「旦那っ!約束は守りやしたよ。」
来栖に居た茂吉がニタリと笑う。
「契約だから当たり前だろ?何故、わざわざ戦場にまで来たんだよ?」
「冷たいなぁ…。俺と旦那の仲でしょ?」
「俺は男と仲良くはせん。」
「絖花って花魁とは仲良くしてたじゃないっすか?」
余計な事を言うなと頭が痛くなる。
「茂吉はその絖花と遊ぶつもりだろ?さっさと柊へ帰れっ!」
「いや、俺は旦那と行きますよ?」
「何!?」
「旦那には俺みたいな男が必要みたいですからね。」
勝手に茂吉はこの俺について来ると宣言する。
「茂吉、お前は兵士じゃないだろ?」
「ですが、西元の築城に必要な材木や漆喰の手配は俺みたいな男がやる方が安くつきますよ?」
茂吉の言葉に雪南がうんうんと頷きやがる。
今回の戦場は赤字覚悟…。
この先、茂吉を雇えば今回の赤字は防げると雪南が俺の耳元で囁く。
正直、この若さでこれ以上の借金は負いたくない。